薄毛に悩む男性は多いだろう。
多くの男性が、「髪が薄くなってきた」「将来ハゲないだろうか?」という不安を抱えている。かくいう自分もその一人である。
世の中には、ハゲ対策のためのものとして、様々な「育毛剤」が売られている。
しかし、「育毛剤」に毛を生やす効果はない。
育毛剤ができるのは、せいぜい「保湿して頭皮のコンディションを整える」くらいで、薄毛予防の効果があるかどうかもあやしい。
薄毛対策について、酷いコンプレックス商法が横行しているので、「そういうのに騙されないためにはどうすればいいか?」「現実的な薄毛治療は何なのか?」を書いていく。
なおこれを書くにあたって、板見智『専門医が語る毛髪科学最前線』という書籍を参考にしている。
目次
「育毛剤」という言葉はミスリード!どれだけ高額な育毛剤を使っても髪は生えない
一般的に「育毛剤」と呼ばれるものには、毛が生える成分が入っていない。
「ミノキシジル」や「フィナステリド」などの毛を生やす成分が含まれているものは、「発毛剤」と呼ばれる。
日本では、「育毛剤」は「外部医薬品」、「発毛剤」は「医薬品」の扱いになる。
ミノキシジルなどが含まれた発毛剤は、副作用も起こりうるので、「第1医薬品類」に該当する。(医薬品分類については、一般用医薬品のリスク区分 – 厚生労働省を参考)
育毛剤は、頭皮ケアローションのようなもので、せいぜい「頭皮をケアする」くらいの効果。
頭皮を良い状態に保つことは、髪のコンディションにとって大事かもしれないが、だからといって「毛を育てる」ような効果があるわけではない。
多くの人が、「育毛剤によって髪が生える」とか「弱くなった髪が元気になる」という勘違いをしてしまっているが、それも当然で、業界側が意図的にミスリードを狙っているのだ。
メーカーからすれば、育毛剤は、大したことのない成分のものが高値で売れるので、かなり美味しい商売だ。
薄毛は、コンプレックスを感じる人が多いので、みんな騙されて「育毛剤」を買ってしまいやすい。
高額な育毛剤なんて買っても意味がないので、騙されないようにしよう!
ハゲは遺伝なので、育毛剤による丁寧なケアは無駄
育毛剤を使うことに何一つ意味がないとは言わない。単なる「保湿」でも、頭皮(スカルプ)をケアすることは、それなりに効果がある。
男性のスカルプケアについては、「男性にヘアケアって必要?リンス、コンディショナー、トリートメントについて解説」で解説した。

だがあくまでも、「もしかしたらほんの少しは効果があるかもしれない」という程度のもの。
スカルプケアを完璧にやっていたとしても、ハゲる人はハゲる。
薄毛の原因は遺伝だからだ。
毛髪再生医療を専門的に研究してきた、『専門医が語る毛髪科学最前線』の著者である板見智によると、
- 皮膚の汚れ程度で毛の成長は止まらないから、シャンプーを丁寧にやっても特に意味がない
- 頭皮に優しいシャンプーで頭皮をケアしても、ハゲる人はハゲる
- 食事療法も意味がない(海藻を食べて髪が生えるというのは単なる連想ゲームで、デマ)
らしい。(これもあくまで一人の医師の意見だが。)
ようするに、ハゲる原因は遺伝であり、迷信じみた対策を頑張ってもほとんど意味がない。
「ほとんど効果がない割高な育毛剤を使い続け、それでも進行する薄毛にショックを受ける」……みたいなことを続けるなら、普通にAGA治療を受けたほうがいい。
頭髪を生やす効果のある医薬品は、基本的には医者や薬剤師しか扱うことが許されていないので、育毛剤によるケアに解決を求めるのが間違っている。
薄毛は、ちょっと気になってきた段階でも、AGA(男性型脱毛症)の治療を検討したほうがいい。
AGA治療には、「予防(進行を遅らせる)」と「発毛(抜けた状態から生やす)」があり、料金や副作用などの負担が全然違う。
不安になってきた段階で、早めに医療機関で対策したほうが、確実に効果があるのだ。
日々のケアに意味がないわけではないが、「育毛剤で薄毛に対応する」というのは的はずれな労力の使い方なので気をつけたい。
「発毛剤」は良い方法か?
本格的なAGA治療は通院が必要だが、「発毛剤」は、病院に行かなくても手に入る。
薬剤師による適正使用の確認などが必要だが、Amazonなどネット通販でも購入することが可能だ。
「スカルプDのメディカルミノキ」や「リアップX5」は、日本で許可されている最大濃度のミノキシジル(発毛成分)が配合された「発毛剤」だ。「育毛剤」と違って、ちゃんと毛を生やす効果が確認されている。
ただ、発毛剤には副作用もあり、個人判断で発毛剤を購入して薄毛治療というのも、それほど推奨される方法ではない。また、「発毛剤」は、効果が弱いものが多く、ちゃんと毛が生えるとは限らない。クリニックで、医者の指導のもとで行ったほうが、安全だし確実ではある。
「発毛剤」は、効果は弱いが、AGA治療と比べれば価格は比較的安い。(あくまでもAGA治療と比較してであり、発毛剤もそれなりに高額)
発毛剤について、薬剤師の方が効能や商品の説明をしているYouTube動画があるので、以下の動画をおすすめしておく。
医療機関は確実だが高額
薄毛治療は、医療機関において、ちゃんとしたノウハウが確立されているし、ちゃんと毛は生えてくる。
60代でハゲているならもう仕方ないかもしれないが、20〜40代くらいの薄毛であれば、AGA(男性型脱毛症)の治療を普通に行えば、かなりの確率で薄毛は改善する。
本当に効果のある育毛治療は、医療行為かつ審美治療に分類されるので、AGAを専門に扱っているクリニックでしか行うことができない。
毛を生やす医療行為は
- 投薬治療(薬剤を飲む)
- 注入治療(頭皮に注射)
- 自毛植毛(毛根を移植)
などがあるが、一般的なのは飲み薬による「投薬治療」。
基本的には、処方された薬を1日1回飲む治療になる。
やることは薬を飲むだけなのだが、副作用や初期脱毛があり、それなりにプレッシャーは大きい。しかもちゃんと効果が出るためには、半年は続ける必要がある。毛を生やすのは簡単なことではないのだ!
一番のネックになるのが、保険適用外の審美治療であること。かなりお金がかかる。
「発毛(毛のない状態から生やす)」の場合は、「月1回の通院、1日1回の服薬、月2万円の出費」が目安。それを半年から1年やらないと効果が出ない。
医療機関に頼る場合、「なんでハゲてるだけでこんなことをしないといけないの?」と悲しい気持ちになるかもしれないが、意味のない育毛剤やシャンプーなどにこだわり続けるよりも、ちゃんとAGA治療を受けたほうが、効果があるし、気持ち的にも楽だろう。
もちろん、「そこまでして毛を生やそうとするべきか?」をよく考える必要がある。
ハゲのままオシャレな人間を目指すという選択肢
薄毛は、体質的な問題だ。
頭髪の薄さと健康状態は関係ないし、めちゃくちゃ健康な人でもハゲる体質ならハゲる。だからこそ、薄毛治療は保険適用外なのだ。
「無駄にお金を使わせること」をしやすい美容業界や、それをスポンサーとしているメディアは、人のコンプレックスを煽りがちだ。もちろんそれは社会的に褒められることではない。
人の体質をコンプレックスに感じさせようとする業界の思惑に従う必要はないし、「生理的なものなのだから仕方ない」と割り切ることも大事。
ただ、「自分はどうせハゲなのだから……」と投げやりになって、他の部分の身だしなみまで諦めてしまうのはおすすめしない。
「薄毛は体質的な問題だから仕方ない」と割り切った上で、エチケットとか服装とか、ちゃんと努力が反映される重要な部分に注力したほうが、ずっと生産的だ。
ハゲのままオシャレな人間を目指すという選択肢も、当然ながらある。
個人的におすすめなのは、松本圭司『ハゲを着こなす』という書籍。
薄毛の日本人に似合うヘアスタイルなどを論理的に提案している。
マインド面だけでなく、美容室の選び方など、実践的な話もあり、薄毛にコンプレックスを感じている人にはおすすめできる内容だ。
まとめ
POINT
- 「育毛剤」という言葉はミスリードで、「頭皮を保湿」くらいの効果しかなく、毛が育つわけではない
- 薄毛のほとんどは遺伝であり、育毛剤による頭皮ケアをいくら頑張っても、ハゲる人はハゲる
- 「発毛剤」には毛を生やす成分が含まれている。「育毛剤」が「外部医薬品」であるのに対して、「発毛剤」は「医薬品」に分類される
- 医療クリニックによるAGA治療は、「予防」にしても「発毛」にしても確実な効果がある。しかし、保険適用外なので高額
- 美容業界やメディアは、「ハゲはなさけないもの」というコンプレックスを煽りがちだが、その手のものを真に受ける必要はなく、薄毛治療は無理して行わなくていい
- 薄毛だからといって他の身だしなみを諦めてはいけない。「ハゲのままオシャレ」を目指す選択肢もある
以上、育毛剤には意味がないという話、現実的な薄毛対策、業界のコンプレックス商法について解説してきた。