ダイエットに成功すれば見た目が良くなることはわかっている。しかし、ダイエットは難しい。
特に、仕事が忙しいと、それに比例してダイエットの難易度が上がる。
忙しい社会人には、イレギュラーの発生、仕事のストレス、付き合いでの食事など、ダイエットの障害になるものが満載だ。
自分も、社会人生活とダイエットの両立に苦しんだ経験があるのだが、社会人ダイエッターとして、「これはかなり良い方法なんじゃないか」という方法を確立したので、それをシェアしたい。
「仕事が忙しいけど痩せたい!」という人にとっては、なかなか良い方法だと思う。
目次
「意志力」は有限のリソースなので、仕事とダイエットの両立は難易度が高い
まず、「なぜ仕事が忙しい人はダイエットが難しいのか?」という話をしたい。
その理由は、人間の「意志力」が有限のリソースだからだ。
「意志力」とは、自制心や、自己管理能力を発揮する力のこと。仕事に集中するときや、食べるのを我慢する自制心を発揮するときに、「意志力」を消費する。
ロイ・バウマイスターという心理学者が、「意志力」という概念を普及したのだが、この話は色んなところで引用されているので、聞いたことのある人は多いかもしれない。
なお、「意志力」を引用した書籍で、世界や日本でトップクラスに有名なのが、健康心理学者ケリー・マクゴニガルの『スタンフォードの自分を変える教室 』。ダイエットに関してもめちゃくちゃ有用なアドバイスが詰まっているので、おすすめの本だ。
「意志力」について簡単に言うと、「意志力は、体力や筋力と同じように、使うと消耗する」という話。
普通に考えれば、当たり前の話に思えるかもしれないが、心理学の実験で実証されている。
一応、どういう実験か説明すると、対象の生徒に対して、
- 計算問題のテスト
- お菓子を我慢できるか?
のふたつを行う。
この結果、「計算問題で頭を使った生徒ほど、お菓子を我慢できなかった」。また、「お菓子を我慢しなくてよかった生徒ほど、計算問題に熱心に取り組むことができた」ことがわかった。
「計算問題を頑張ること」と「お菓子を我慢すること」は、「意志力」という共通のリソースを消費するので、片方を頑張るともう片方ができなくなる、というわけだ。
これは「忙しい社会人」にとっても同じことが当てはまる。
「仕事を頑張る」と「ダイエットを頑張る(食べるのを我慢する)」は、「意志力」という共通のリソースを消費するので、両立する難易度が高いのだ。
実験を持ち出すまでもなく、「そりゃそうだな」という話かもしれない。だがこれは、働きながらダイエットをしようとする人にとって、なかなかに重い事実だ。
ダイエットの基本は「食事制限」だが、ストレスフルな仕事をしている人ほど、食べるのを我慢する「意志力」が残っていない。
また、食事制限に「意志力」を使ってしまうと、仕事のパフォーマンスが落ちてしまう。
もし、仕事をしなくてもよく、空いた時間にずっとゲームなどをしてていい環境だったら、多くの意志力を「食事制限」に振り分けられるので、ダイエットは簡単になる。
また、見た目を職業にしている人(ルックス向上が仕事のプラスになる度合いが大きい人)ほど、自分の「意志力」のリソースをダイエットに向けやすいので、簡単に痩せやすい。
美容関連やフィットネス関連の人は、ダイエットも仕事の内であり、「意志力」のリソースを「仕事として」ダイエットに振り分けることができるので、他の仕事をしている人よりも体験を維持しやすいのだ。(もちろん当人たちは日々努力しているし、楽をしているわけではないが)
他の仕事をしている社会人は、「痩せることや体型維持が仕事に含まれている人たち」を見て、「なぜ自分は彼らのようになれないのだろう?」と落ち込む必要はない。
見た目と関係ない業務をこなしながら、なおかつダイエットをやり遂げるのは、そもそも難易度が高いことなので、現実的に可能なやり方を模索していく必要がある。
短期的な体重に一喜一憂するのはやめよう!脂肪は急に増えたり減ったりしない。
脂肪は、急に増えたり減ったりしない。
これはダイエットの基礎知識で、知っている人は多いだろうが、一応解説しておく。
人間の脂肪は、1kgあたり7200kcalほど。
成人男性が3日何も食べないで、やって1キロ脂肪が落ちる、というレベルの話なので、脂肪はそれくらい落としにくく、短期的に減らせない。あと、栄養を吸収して脂肪にできる程度にも限りがあるので、どれだけ大食いしても1日程度で急に太ったりしない。
だが、多くの人が、「風邪を引いて何も食べれず3キロ体重が減った」「暴飲暴食で3キロ増えた」などの実体験を持っているだろう。
実際に、3キロ程度であれば、体重はすぐに増えたり減ったりする。これはなぜなのか?
簡単に説明すると、人間には、炭水化物や塩分が、水と結びついた状態で身体に蓄積されている。
そのため、しばらく何も食べないと、炭水化物や塩分が抜けて、それにくっついている水分がなくなるので、けっこう体重が落ちる。逆に過食をすると、水分が増えて体重が増える。これは「むくみ」とも呼ばれる。
炭水化物や塩分と結びついている水分によって、1〜3キロくらいは、短期的に増えたり減ったりする。
だから、例えば3日間何も食べなかった場合、体重は4キロほど減っているかもしれないが、そのうちの脂肪は1キロで、残り3キロぶんは水分。食事を再開すると3キロの水分はすぐ元に戻る。
厳密な減量をしている人は別として、普通に食べたり飲んだりしている人は、1、2キロほどの体重に一喜一憂してはいけない。
少なくとも1週間以上のスパンで見なければ、太っているか痩せているかわからないのだ。
社会人であれば、付き合いなどで、過食が続いてしまうことは普通にある。そんなとき、2、3キロ体重が増えていても、「ダイエット失敗だ!」と思う必要はない。
付き合いやストレスでたくさん食べてしまうのは仕方ないが、それをキッカケに自制心が崩壊して、ダイエット自体を諦めてしまうことを避けよう。
一日食べたくらいで急に太ったりはしない。食べ過ぎてしまっても、次の日は食事を控えればそれでバランスはとれる。ダイエットは長期戦略が大事で、長いスパンで摂取カロリーを減らしていくことを考えるのだ。
しばらく食べないで胃腸を休めることは、むしろ身体に良い
「毎日決まった方法で少しずつ」というタイプのダイエット法は多い。
だが、忙しい社会人の場合、生活リズムが不規則になったり、イレギュラーが発生することは避けられない。
そのため、社会人は、「毎日ちょっとずつ」系のダイエットがかなり難しい。
忙しい社会人ダイエッターにとって重要になる知識は、「しばらく何も食べずに胃腸を休ませるのは、わりと身体に良い」ことだ。
保守的・伝統的な栄養観は、「ちゃんと食べろ」「毎日定期的に食べろ」ということを言いがちだ。これは、未成年や老人には当てはまるかもしれないが、健康な成人にとっては、あまり当てはまらない。
食料がすぐ手に入らない環境ならまだしも、飽食の現代においては、定期的に食べ続けるよりも、意図的に空腹の時間を作ったほうが、むしろ身体にとってはメリットが大きいのだ。
「定期的に何か食べないとダメ」と「胃腸を休めるのは身体に良い」は対立する考えだが、諸々の研究結果によると、後者のほうが正しい可能性が高い。健康関連の情報に目ざとい人であれば、空腹状態で胃腸に休めると良いことは、常識にはなっているだろう。
ガリガリに痩せるまでダイエットするとか、極端な断食が身体に良いと言うつもりはない。
参考書籍や根拠については後述していくが、「16時間程度の断食(ファスティング)」なら、ダイエットはもちろん、健康にとってもメリットが大きい。
「定期的に何か食べないとダメ」とか、「緩急をつけるのは身体に良くないこと」というイメージを持っていると、食べなくてもいいときでも、「体調が崩れるから何か食べなきゃ」と考えて、カロリーを過剰摂取してしまうし、胃腸が疲れるので体調も悪くなりやすい。
もし仕事の都合やストレスなどで過食してしまったのなら、その翌日はほとんど食べないで胃腸を休めたほうが、ダイエットにも良いし、健康にとっても良い場合が多いのだ。
忙しい社会人だからこそやりやすいダイエット法
青木厚『「空腹」こそ最強のクスリ』などの書籍で推奨さているのは、「16時間の断食(ファスティング)」だ。
詳しい説明は割愛するが、一定の空腹の時間を作ると、オートファジーが活性化することによって、免疫、血管、自律神経などに良い影響がある。
「16時間ファスティング」は、1日の間に、何も食べない時間を16時間作るという意味。
これは結構簡単で、夜ご飯抜きで眠ってしまえば、自然と16時間ファスティングになる。
16時間ファスティングは、当然お腹が空くが、後半のお腹が空くタイミングに「睡眠」を持ってくれば、(寝ているので)空腹感を感じない。
これは理論上は、かなり合理的な方法だ。だが、現実的にそれを続けるのは、けっこう難しかったりする。
なぜなら、空腹時ほど眠りにくいから。
ダイエットしたことのある人は経験のある人が多いかもしれないが、お腹が空いているほど眠りにくい。
逆に、なぜお腹がいっぱいになると眠くなるのかというと、身体が脳ではなく消化吸収にエネルギーを回そうとするからだ。
実は、満腹時に寝るよりも、空腹時に寝たほうが、睡眠効率は良い。消化吸収のためではなく、純粋に身体を休めるために寝たほうが、睡眠の質は高まる。
「16時間ファスティング(夜ご飯を抜いて寝てしまう)」は、
- 摂取カロリーが少なくなるので痩せる
- 胃を休ませることができるので健康に良い
- 空腹時のつらさを睡眠によってごまかせる
- 消化吸収にエネルギーを使わないので睡眠の質が上がる
など、めちゃくちゃメリットがある!
一方で、問題点は、「空腹時ほど眠りにくい」こと。
規則正しい生活を送っている人ほど、うまく眠れずに睡眠リズムが狂ってしまうなどの理由で、「16時間ファスティング(夜ご飯を抜いて寝てしまう)」が難しいのだ。
そして、「16時間ファスティング」は、忙しい社会人だからこそやりやすい!
睡眠不足のときに、「16時間ファスティング」をやればいい。
仕事をしていると、「睡眠時間がうまく確保できなくて、めちゃくちゃ眠い」ことはわりとある。
お腹が空いていても、めちゃくちゃ眠たければ眠れる!
仕事で疲れて眠たいときは、あえて食事をとらずに、そのまま寝てしまえば、ダイエットになるし、健康にも良いし、睡眠効率も上がるしで、良いことばかりなのだ!
仕事をしている社会人は、生活に波があるのは当たり前だが、その波(睡眠不足)をうまく利用していくのが、賢いやり方だと思う。
「空腹」もストレスだが、だからこそ良いという視点
「16時間ファスティング(夜ご飯を抜いて寝てしまう)」は、ダイエットにとっても健康にとってもメリットが多い。
だが一方で、ある程度の空腹感が続くのは、人間にとってストレスではある。
ただ、「適度なストレス」にこそメリットがある、という考え方を持っておくと良い。
上で紹介したケリー・マクゴニガルが別の本で語っているが、ストレスには、「ストレスの感じ方によって、ストレスから受ける効果が変わる」という性質がある。
「ストレスは絶対に避けなければならないものである」と考えている人は、ストレスの悪影響を受けやすい。一方で、「ストレスは意味のあるもので、それに対抗しようとすることに良い影響がある」と考えている人は、むしろ適度なストレスが心身に良い影響を与える。
このようなストレス観は、健康心理学の分野では定説になっていて、例えば例えばジェフ・ウィルザー『科学でわかった正しい健康法』でも同じようなことが書かれている。
なお、ここまで色々な本を紹介してきたが、書籍で知識を学びたいなら、鈴木祐『不老長寿メソッド』がけっこうおすすめ。
これまでに出た「エビデンスのある健康法」をまとめたような内容で、効率的に必要な知識を得られると思う。
鈴木祐『不老長寿メソッド』で説明されていることだが、これらの理屈には「ホメオスタシス」がある。
「ホルミシス」とは、「適度なストレスが働くと、そこから回復する作用が働くので、ノンストレスよりも良い」という考え方。極端なストレスはもちろん有害だが、適度なストレスは、ホルミシスが働くので、身体にとってはメリットが大きいのだ。
何事も「やり過ぎ」がダメで、「適度」が良いという話でもある。
色々引用してきて何が言いたいのかというと、しばらく食べない(お腹を好かせた状態)というのは、ストレスではあるのだけど、それも含めて健康に良いということだ!
ちょうどいい感じの軽食について
空腹状態でぐっすり寝て回復したあとに、朝に食べたいものを食べたほうが、ダイエットにもなるし健康にも良い。
もっとも、お腹が空き過ぎて疲れているけど眠れないとか、途中で起きてしまうという人は、そこまで断食にこだわり過ぎず、ちょっと食べるのもいいと思う。
自分はよく軽食として、「サラダチキン」「カロリーの低いスープ」「りんご」を食べる。
この組み合わせで、カロリーは300〜350kcal程度。
「食べないと寝れない」という人には、こういう感じの食事がおすすめだ。
鈴木祐『不老長寿メソッド』でも書かれていたことだが、食物繊維やたんぱく質は睡眠の質を向上させる。
サラダチキンでタンパク質、りんごで食物繊維を採って、カップスープで満足感を増やす、という組み合わせを、自分はよくやっている。
「固形物を摂らない」+「食物繊維とたんぱく質」であるなら、「青汁」と「プロテイン」というのもアリ。
合わせて150kcalほどはあるので、腹に溜まるし、プロテインは消化器官への負担をかけない。
社会人は、上手に摂取カロリーを減らしていくしかない
ダイエットは結局のところ、「いかに摂取カロリーを減らしていくか」だ。
働いている社会人は、状況に応じた工夫によって、カロリーの総摂取量を減らしていくしかないだろう。
POINT
- 「意志力」を我慢に使うと仕事のパフォーマンスが落ちるので、仕事前や仕事中は無理なカロリー制限をしない
- 付き合いやストレスで過食してしまうこともあると割り切り、それによって落ち込んだり自暴自棄になったりしない
- 疲れている日・睡眠不足の日の仕事終わりを利用して、「食べずに寝てしまう(16時間ファスティング)」というカロリー制限の方法をとる
というのが、社会人に向いている方法だと思う。
「毎日の整った食事」がダイエットの理想かもしれないが、仕事が忙しいと思い通りにならない場合が多い。生活リズムが荒れる波をうまく乗りこなす形で、カロリー制限をしていくことが、社会人ダイエッターには求められるのである。
以上、「忙しい社会人向けのダイエットアドバイス」について書いてきた。