自分は、ファッションに興味のないまま、大学時代や20代後半を過ごした男だ。
いわゆる、「チェックシャツを着た理系のオタク」だった。
この記事では、もともとは「ファッションが苦手な人」だった経験を活かして、初心者向けにメンズファッションの解説をしていきたいと思う。
目次
なぜ理系の男性やオタクはチェックシャツを着るのか?
ファッションが苦手な人、服に興味がない人でも、何らかの服を着る必要がある。
制服でいられる高校時代を卒業したら、自分で普段から着る服を選ばなければならなくなるのだ。
そういうとき、苦手意識のある人ほど、テストで赤点を回避しようとするように、「自分はファッションが苦手だが、せめて50点は稼がなければならない」みたいな発想になりがちだ。
実はファッションは、一般的なテストのような「加点方式」ではなく、最初に100点持っていて、そこから点が引かれていくような「減点方式」だ!
ファッションを、「積極的に点数を稼がなければならない加点方式」と間違って考えている人は、いわゆる「チェック柄」や「文字がプリントされた服」のようなダサい服を選んでしまいがちになる。
「理系の学生やオタクは、チェックシャツを着る」という風潮がある。
これは、自分の経験からも言えることだが、誇張された俗説というわけでもなく、「実際に理系のオタクはチェック柄を好みやすい」と思う。
自身をふりかえっても、同級生を見ても、理系男子は、チェックシャツや、よくわからない英字がプリントされた服を選びがちだ。
美容やファッションにこだわるようになってから、「なぜ理系男子はチェックシャツを好むのか?」について考えてみたことがある。
当時の自分の思考を振り返るに、「工数がかかってるわりには安いからお得」みたいなことを考えていた気がする。
色や柄が多く、それが組み合わさっていると、「工数がかかっている感」があり、それが理系オタクの素朴な感性と結びついて、「チェックシャツ=好ましいもの」となるのかもしれない。
理系オタクのファッション思考を、あえて言語化すれば、「ファッションのためには一定のオシャレポイントの獲得が必要であり、工数がかかっているものにはオシャレポイントがあるので、チェック柄が無難な選択肢」みたいな考え方だと思う。(※あくまで自分や当時の同級生を振り返ってみてのものであり、一般化できるものとして主張するつもりはありません)
さらに言うと、理系やオタクがダサいのは、「目的のないものが苦手」というのがあると思う。
理系の男性やオタクは、「機能性、有用性」を好みがちで、そういう方向性の審美眼は悪くなかったりするのだけど、「普段着(ファッション)」は特に目的がない。
「普通に着れている」だけで、機能的な要件はすでに満たされていて、そこから「ファッション性を考えよう」とか言われてもよくわからないのだ。
ここで、ファッションに興味がない理系の男性に向けて、あえてファッションに「目的」を設定するならば、「マイナス要素が最小化されている」のが、オシャレでカッコいいファッションだ。
理屈で考えたい人は、「マイナスとなる要素が最も少ない(なるべく欠点のない)状態」を目指すのがいい。
「ファッション誌」を読むとダサくなりやすい!
勉強するときは、参考書などを読んで、語彙や概念その運用法を理解していくのが、普通のやり方だ。
しかし、いつもの勉強のやり方の延長で、ファッション誌などを読んで語彙や概念を理解しようとするほど、ダサくなってしまいやすい。
なぜなら、ファッション誌やファッション系メディアのほとんどが、「購読料」ではなく、「スポンサーからの広告収入」で運営されているからだ。
ようするに、ファッション関連の雑誌やメディアは、「いかに読者をオシャレにするか」ではなく、「いかに服を買わせるか」という意図で運営されている。
上で述べたように、ファッションにおいて重要なのは「加点を増やす」ではなく、「減点を減らす」ことだ。一方でファッション誌は、「加点を増やす」方向性で服を紹介しがちだ。良い点をアピールしたほうが服を売りやすいからだ。
「これとこれの組み合わせがカッコいい!」とか「今はこれがトレンドだからイケてる!」みたいな情報が載っているが、これは基本的にセールストークであり、ファッションの洗練に繋がらない。
よく言われる「トレンド」というのも、「新しい服を買わせるための業界の話題作り」なので、頑張って押さえるメリットはあまりない。もちろん時代ごとの無難なファッションの組み合わせというものはあるが、それを学ぶためにファッション誌を読むのは良い選択ではない。
ファッションにおいて必要なのは、「マイナスとなる要素」を削っていくことだ。一方で、ファッション誌は、「服を売る目的」で「プラス要素」を並べ立てるものが多く、ちゃんと内容を理解しようとするほど、むしろダサくなる。
ファッションはシナジーを追求するゲームではなく、ミスを最小化するゲーム
男性は、ゲームとかトレーディングカードの影響で、ファッションを「組み合わせによってシナジーを発揮して、高い点数を目指すゲーム」と考えがちだ。
しかし、この考え方は、あまり良くない。
何度も言うように、ファッションは「加点方式」ではなく「減点方式」だからだ。
もちろん、「こういうアウターとこういうボトムスは合いやすい」みたいなものはあるが、それはあくまで「変になりにくい」から大事なのであって、「加点要素がある」わけではないのだ。
なお、女性と男性とでは、ファッションに対する考え方、捉えられ方が違う。
女性は、ファッションにおいて、「加点を狙う(個性や感性を表現すること)」が、許される傾向がある。
「なぜ女性のファッションは様々なものが許容される傾向があるか?」について、率直に言ってしまうと、「若い女性には価値があるから」だ。
女性の服に価値があるのではなく、女性であること自体に価値があるのだ。だから結局のところ、ファッションが見られているわけではない。
例えば、男性側の視点から考えて、「ファッションがイモ臭い美人」と、「ファッションを頑張っている不美人」とで、どちらが好ましいかと言えば、前者と思う人が多いだろう。
というか美人であれば、「ファッションがイモ臭い」ことすら、むしろプラス要素になる。
男性であれ女性であれ、「他の要素のマイナスをファッションセンスによって逆転」というのは難しい。
現代では、貧富の差が服に現れるわけでもないので、基本的にファッションは「こなさなければならないもの」であり、プラス要素を獲得しにくい性質のもの。(ファッション業界は、「この服を着ればイケてる」というイメージを煽りがちだが、それは単なる販売戦略)
なお、男女で違いがあるとすれば、女性と違って男性は、「価値がない・嫌われやすい・怖がられやすい」存在であることだ。
そのため、男性は、女性よりも許容されるファッションの幅が狭いし、基本的には「主張しないこと」が求められる。男のファッションにおける「加点要素」なんて、ほとんど注目されないし、誰も求めていない。
何度も繰り返し言うが、メンズファッションにおける重要な点は、なるべく「マイナス要素」を少なくすることだ!
「マイナス要素」を具体的に言うと
- シワ、汚れ、サイズ違いなど、わかりやすいミス
- 余計な柄やテクスチャー
- 無駄な自己主張
ちゃんと服を着た上で、これらの「マイナス要素」をなるべく少なくするのが、「メンズファッションの理想」だ。
この考えでいくと、男性が目指すべきファッションは「スーツ」や「白衣」や「制服」になる。
もちろん普段着の場面で、スーツのような完全にフォーマルなものは和感があるので、TPOに合わせた上で「マイナス要素」が少ないもの、となる。これがけっこう難しい。
メンズファッションをむりやりゲームに例えるなら、「音ゲー」とか「弾幕シューティングゲー」のような、ミスをしないことが重要になるゲームだ。
ファッション誌が提示する「これを着ればモテる」は嘘で、メンズファッションは、「こなす」ものであって、「楽しむ」ものではない。
男性において、洗練されたファッションを目指すのであれば、「自己表現」ではなく「身だしなみ」だと考えたほうが合理的だろう。
とはいえ、男性はファッションを楽しめないのかというと、そういうわけでもない。「ミスがない(マイナス要素が多くない)」という要件を満たした上で、ちょっとしたこだわりを発揮していくのが、洗練された男性のオシャレになる。
ファッションを学ぶための漫画、書籍、YouTube動画
上で述べたが、ほとんどが広告で構成されている「ファッション誌」を読んでも、ファッションを学ぶことはできない。
だが、メンズファッションを学びたい人にとって有用な漫画や書籍はある。
服を着るならこんなふうに
『服を着るならこんなふうに』は、縞野やえ著、MB監修の、メンズファッション漫画だ。
ちょっと前にすごく話題になったので知っている人も多いかもしれないが、「マイナス要素の少ない」メンズファッションを具体的に実践する上で、とても参考になる内容。
単純に漫画としてけっこう面白く、夢中で読み進めてしまうほど魅力がある。
巻数が多いが、1巻の内容だけで十分に参考になる。
最速でおしゃれに見せる方法
『服を着るならこんなふうに』を監修しているMB氏の書籍で、漫画よりもこちらの書籍のほうが内容が詰まっているし、値段あたりの情報量は多い。
オシャレとされる人が「感覚」でやっていることを、「ロジック」でわかるように言語化しているので、とても参考になる。
理系やオタクの男性でも、ファッションを「理屈」で理解しやすいだろう。
ところで、MB氏はYouTubeチャンネルでファッションを解説していて、YouTubeのほうは漫画や本と違って最後まで無料で見れるので、まずはYouTube動画から見てみることをおすすめする。
【世界一分かりやすいおしゃれの方法!】ドレスとカジュアルのバランスを覚えよう!
MBさんが大ヒットした理由は、ファッションという感覚的なものをロジックで言語化し、誰でも「使える」実践的な方法を編み出したからだろう。
「ドレス(フォーマル)」と「カジュアル」の二分法で服を考えて、そのバランスを調整するという方法で、シンプルかつ、誰でもすぐに使える「ファッションの視点」だ。
「日本人は欧米人と比べて体系が劣っている」という事実をごまかさず指摘して、普段着でも「ドレス」と「カジュアル」の比率を7:3にするのが良いと提案。
めちゃくちゃ納得できるし、かつ実践的。自分がこれを最初に知ったのは『最速でおしゃれに見せる方法』という書籍だったが、とても衝撃を受けた。
どんな人でも簡単におしゃれになれる!コーディネートを作る論理「洋服の3要素」を学ぼう!
上の動画を見ても、「ドレスかカジュアルか判別できない」という人のために、より具体的に、どういうものが「ドレス」で、どういうものが「カジュアル」なのか判別できる方法を示している。
- 「デザイン」……ジャケットが「ドレス」、パーカーが「カジュアル」
- 「素材」…… 細ければ「ドレス」、太ければ「カジュアル」
- 「シルエット」……ツヤがあれば「ドレス」、シワがあれば「カジュアル」
- 「色」……地味な色ならば「ドレス」、派手な色ならば「カジュアル」
という見極め方を具体例と共に提示している。詳しくは動画を見て欲しい。
具体的にどこで服を買う?有名チェーン店が安定!
「実際にどこで服を買うか?」だが、「ユニクロ」「H&M」「ZARA」「無印良品」が安定。
- 「ユニクロ」……誰でも入りやすく買いやすい。『服を着るならこんなふうに』や『最速でおしゃれに見せる方法』でも書かれているが、ボトムスはユニクロがド安定
- 「H&M」……ユニクロよりも安めで、カジュアル寄りの服が多い
- 「ZARA」……ユニクロよりも高めで、ドレス(フォーマル)寄りの服が多い
- 「無印良品」……以外と選びやすく良い服が置いてある。カジュアル寄りのものが多め
同じチェーン店でも、店舗によって品揃えが違ったりするので、複数の店舗を回ってみるのもいいかもしれない。
「マイナス要素をなくす」ためのファッションとしては、有名チェーン店が安定で、他には「GAP」「ライトオン」「FOREVER21」などが候補になるだろう。
「ムラサキスポーツ」などのスポーツショップにも服が売っているが、成人男性の普段着としてはカジュアル過ぎるものが多い印象。
「女性に好かれる服装」とは何か?美醜の評価は相対的に決まる!
ここまで、「マイナス要素の最小化」「欠点のない服装を目指す」ということを言ってきたが、「それが本当に良いファッションなの?」「そんなので女性にモテるの?」と思うかもしれない。
しかし、こう考えてみてほしい。もし仮に「マイナス要素のない顔」「欠点のない顔」があるとして、それはいわゆる「イケメン」とか「美女」ではないだろうか?
人間の美醜は相対的なものなので、「マイナス要素が少ないファッション」をちゃんとやれば、他の男性ができていないぶん、相対的には「カッコいい服装」なのだ!
顔や体型とか、年収や地位とか、他の重要な要素をファッションで逆転することはできない。
しかし、キチンとした方法を踏まえて実践できれば、ファッションによって、相対的なアドバンテージを稼ぐことはできるだろう。
ほとんどの人間が「マイナス50点」な状況で、自分は「マイナス10点」くらいだったとしたら、それは相対的にはオシャレで、「女性に好かれる服装」なのだ。
以上、「メンズファッション初心者向け解説」をしてきた。
ちなみに、身もふたもないことを言うと、ファッションにおいては「体型」が大事だ。
「マイナス要素の最小化」を目指すべしと言ってきたが、太っていることは明確なマイナス要素だ。
スリムな体型な体型の人ほど服を選びやすいし、逆に、太っているとファッションの難易度は跳ね上がる。
オシャレになりたいなら、ファッションセンスを磨くよりも、ダイエットを頑張ったほうが楽かもしれない。
当サイトでは、ダイエット関連の記事も書いているので、よければ参考にしてほしい。

