ファスティングとは何か?正しいやり方と効果の根拠を解説【16時間断食】

「意図的に固形物を口にしない期間をつくる」ことを、一般的に「ファスティング」と言う。

「ファスティング」について調べると、あやしげな酵素ドリンクを紹介されたりなど、胡散臭いイメージがあるかもしれないが、ちゃんと「理屈」と「エビデンス」があり、良い効果が得られるとわかっているものだ。

例えば、「16時間断食」と言われるファスティングは、誰でもやりやすく、なおかつ効果的な方法なので、理屈だけでも理解しておいて損はない。

今回は、主に、「ファスティングの正しい方法」「ファスティングの効果に対するエビデンス」を解説していく。

なるべく、スピリチュアルな要素なしで、科学的なエビデンス重視で書いていきたいと思っている。

  • ファスティングとは何か?
  • どういう理屈で「効果がある」とされているのか?
  • ファスティングの「正しいやり方」
  • ファスティングを解説した書籍の概要まとめ
  • ファスティングのデメリットと酵素ドリンクに意味がない理由
  • おすすめのファスティング法

という手順で話を進めていく。

「ファスティング」とは何か?「断食」との違いについて

「ファスティング」は、「断食」と同じ意味で、「食べ物を断つ」こと

英語の「fasting(ファスティング)」を和訳すると「断食」になる。

ちなみに、「fast」という動詞は「断食する」という意味で、「fast」は「断食する期間」を意味する名詞でもある。

  • fasting……食べ物を断つこと
  • fast ……食べ物を断っている期間

マメ知識だが、「breakfast(朝食)」は、「fast(断食する期間)」を「break(破る)」から「朝食」という意味。

いろんな独自定義をしようとする人がいるけど、「ファスティング=断食」という認識で何も問題ないです

 

「ファスティングの効果」と、その理論的な根拠

「ファスティングの効果」について、他のサイトや書籍では「デトックス効果」とか「毒素の排出」といったスピリチュアルな用語で説明されることが多い。

それがいったいどういう意味で、どういう理屈なのか。以下では、「科学的に、ファスティングにどういうメリットが認められているか」を述べていく。

 

消化器官に休息を与える

1日3食食べて、さらに間食まですると、消化器官が休みなく働いている状態。これがずっと続くのは、身体にとって良いことではない。

休みなしで働かされている時間が続くと、不具合が発生しやすくなる。「消化器官を空にする時間を増やす」ことによって、胃腸や、酵素やホルモンを分泌する臓器に、休息を与える。

「しっかり休ませる」ことが、各臓器や腸内環境の、改善・回復に繋がる。

 

オートファジーの活性化

生物には、「オートファジー」という、古くなったタンパク質や細胞をエネルギーとして再利用する働きがある。オートファジーには、アンチエイジングや体調改善など、多くのメリットがある。

「空腹」によって、オートファジーが活性化するスイッチが入ることがわかっているので、ファスティングをするとオートファジーが活性化して身体に良い効果があるという理屈。

 

ホルモンバランスを整える

人体は、胃が満たされているときに「インスリン」というホルモンが分泌され、空腹のときに「ノルアドレナリン」「成長ホルモン」などのホルモンが分泌されやすくなる。

このホルモンのバランスが乱れると、身体の不調や肥満の原因になりやすい。

1日3食に加え間食までしてしまう現代人の食生活では、胃が満たされている状態(インスリンが分泌されている時間)が長すぎるので、意図的に空腹の時間をつくることで、乱れたホルモンバランスを整える。

 

身体の状態をリセットして食べすぎを防ぐ

「ファスティング」によって、「食べすぎ」を防ぎやすくなるので、ダイエットにも有効。

単純に食事の頻度を減らすことで摂取カロリーも減りやすいのに加えて、「糖質中毒」のような状態をリセットすることができる。

砂糖や小麦には中毒性があり、必要以上の頻度で摂取したくなってしまうが、ファスティングによって「意図的に食事の間隔を空ける」と、糖質の過剰摂取を防ぎやすい。

 

「ファスティングの効果」をまとめると

POINT

  • 消化器官を休めることで、胃腸や臓器の機能を回復させる
  • オートファジーを活性化させるスイッチを入れる
  • ホルモンバランスを正常に整える
  • 糖質の過剰摂取などに晒された身体の状態をリセットする

などがあり、これらについては科学的なエビデンスも固まっている。

「ファスティング」は、消化器官が休まって腸内環境が改善され、古い細胞を再利用するオートファジーが活性化するので、「デトックス効果」や「毒素の排出」というのも、そこまで間違った表現ではないかもしれない。

エビデンスやロジックについては、参考にした書籍の概要をこの記事内でまとめている

 

ファスティングの「正しいやり方」

「これが正しいやり方」というものがあるわけではない。

基本的な理屈は、上で説明した通りで、ようは「意図的に空腹の時間をつくると、メリットがある」という話だ。

 

ファスティングの期間

「ファスティングの期間」については、最も簡単なもので「16時間」、長いものだと「3日間(72時間)以上」がある。

科学的なエビデンス込みで推奨されるファスティングの時間は、「16〜48時間」の間。

「どれくらいの時間が最適か?」は、生活スタイルやモチベーションによって異なる。この記事の最後には「おすすめのファスティング法」についても書いているので、よければ参考にしてほしい。

 

ファスティングの考え方

「ファスティング中にどこまで飲食が許されるか?」についてだが

  • どうしても我慢できなくなったら、ナッツやチーズなら食べていいよ
  • どうしても我慢できなくなったら、お粥なら食べていいよ
  • 固形物はダメだけど、野菜ジュースや酵素ジュースならいいよ
  • カロリーのあるものはダメだけど、お茶やコーヒーならいいよ
  • 水以外は口に入れちゃダメだよ

など、様々な流派や作法があり、どれが正解というわけでもない。

例えば、不飽和脂肪酸が豊富なナッツ類は、オートファジーを活性化を手助けするという研究データもあり、「オートファジー目的でファスティングをする」ならば、ファスティング中にナッツを食べるのはアリ。

「消化器官を休めるためにファスティングをする」ならば、どうしても我慢できないときは、なるべく消化器官に負担をかけないお粥を食べるのがよい。

目的によって異なるので、一概に何が正しいかという話ではない。

 

長期ファスティング

ファスティング法で注意したいのは、3日間以上の「長期ファスティング」をやる場合は、「準備期間」と「回復期間」を設ける必要があると言われている

「ファスティングをやる前にたくさん食べるぞ!」というのはダメで、「準備期間」の段階から、動物性の食品や、砂糖やトランス脂肪酸が含まれたお菓子を減らし、消化の良いものを中心の食事に切り替えてから、ファスティングに入る。

「回復期間」では、消化器官をびっくりさせないように、消化の良いお粥などから順番に入れていく。

独自のやり方で「長期ファスティング」をやるのは、危険が伴うので、あまり推奨されない。

「長期ファスティング」は、安全への配慮や準備などのハードルの高さがあるので、「一般的なファスティングは、長くても2日間(48時間)」と考えるのがいいだろう。

また、「長期ファスティング」では、「酵素ドリンク」や「酵素ジュース」が推奨されることが多いが、これはニセ科学である可能性が高いので注意が必要だ。

 

以上、ここまでで「ファスティングの理屈」「ファスティングのやり方」について解説してきたが、より詳しくは、ファスティングについて解説した書籍の内容を見ていくのが良いと考えている。

以下では、「ファスティングについて書かれた書籍」の簡単な概要まとめを書いているので、よければ参考にしていってほしい。

 

『空腹こそ最強のクスリ』の概要

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青木厚『空腹こそ最強のクスリ』は、30万部超えのベストセラーで、日本で「ファスティング」を流行らせた本と言ってもいいかもしれない。

「何を食べるか?」よりも、「どれだけ食べない時間をつくるか?」が大事であることを示した。

「16時間何も食べないルールさえ守れば、あとはそんなに気にしなくていいよ」という、誰もが現実的に継続しやすい方法(16時間断食)を提示しているのが良い。

ロジックやエビデンスの部分もちゃんとして、ファスティングを推奨する本の中で最初におすすめできる内容だ。

 

『空腹こそ最強のクスリ』のロジック

  • 「1日3食」が推奨されがちだが、「1日3食が身体に良い」というエビデンスは存在しない
  • 「1日3食」ではなく、16時間食べない時間をつくる「16時間断食」を推奨している
  • 空腹になると、古い細胞や古いタンパク質を再利用する「オートファジー」のスイッチが入る
  • 「16時間断食」することで、オートファジーを活性化するスイッチを入れることができる
  • 古い細胞が身体に残ったままだと、病気や不調の原因になるが、 オートファジーを起こすことによって、古いものが再利用され、身体がキレイに生まれ変わる
  • 空腹の時間を意図的に作ってオートファジーを活性化すると、健康やアンチエイジング効果があり、だからこそ「空腹こそ最強のクスリ」なのである

 

『空腹こそ最強のクスリ』の実践

実践するのは簡単。固形物を口にしない時間を、16時間つくるだけでいい。

「16時間何も食べない」と考えると、「それはキツい!」と思うかもしれないが、睡眠時間と合わせれば、ハードルは低い。

例えば、夜の8時までに食事を終えて、翌日の昼12時までご飯を我慢すれば、それだけで「16時間断食」が成り立つ。

ご飯を食べたすぐ後はもちろん空腹ではないし、寝ている時間は空腹を感じないので、実質的に空腹を我慢する必要があるのは、朝起きてからの数時間ほど。

睡眠時間も含めていいので、「16時間断食」はかなり簡単。「朝ごはん」か「夜ごはん」のどちらかを抜いて間食をしなければ、それだけで達成できる。毎日でも続けることができるだろう。

著書では「16時間断食」は、毎日行う必要はなく、「週1回」や「週末だけ」や「平日だけ」でもいいとされている。

また、どうしてもお腹が空いてしまった場合「生野菜、ナッツ、チーズ、ヨーグルト」なら食べてもいいとしている。

また、16時間のファスティングの残りの8時間は、「糖質を摂りすぎる以外は、わりと好きに食べていい」と言っていて、かなり優しい。

ファスティングの指南書として、これ以上ないくらい優しいのが本書で、まずは本書の内容を実践してみるのがいいだろう。

 

『トロント最高の医師が教える 世界最強のファスティング』の概要

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『トロント最高の医師が教える 世界最強のファスティング』は、主にファスティングの「ダイエット効果」を主張している書籍で、エビデンスもしっかりしているので、痩せたい人におすすめできる内容。

ファスティングをすると、身体が「飢餓状態」だと認識して、基礎代謝が下がってしまうというイメージを持っている人が多いかもしれない。

だが実際は、「カロリー制限」よりも「ファスティング」のほうが、基礎代謝を下げにくく、ダイエットが成功しやすいという内容のことを本書は主張している。

 

『トロント最高の医師が教える 世界最強のファスティング』のロジック

  • ファスティングをすると、身体が「飢餓状態」になって基礎代謝が減ってしまうというイメージを持っている人が多い。だが実は、適度なファスティングは基礎代謝を下げず、むしろ下手なカロリー制限が基礎代謝を下げる要因になる
  • 「胃が満たされた状態」が慢性的に続くと、「インスリン」というホルモンが分泌されたままの状態が続き、太りやすい体質になる
  • 「胃が満たされていない状態」では、「ノルアドレナリン」「成長ホルモン」「コルチゾール」といった、「インスリン」とは逆の働き方をするホルモンが分泌される
  • 現代人の食事は、「インスリン」が分泌されすぎの「ホルモンバランスが乱れた」状態なので、意図的に「空腹」の時間をつくり、「ホルモンバランスを整える」必要がある
  • 「ホルモンバランスが乱れた」状態でカロリー制限をすると、身体は基礎代謝を下げ、ダイエットが難しくなってしまう。つまり、食事回数が多いままカロリー制限をすると、基礎代謝が落ちてしまいやすい
  • 「ファスティング」は、ホルモンバランスを整え、「ノルアドレナリン」など基礎代謝量を増やすホルモンを分泌する。そのため、イメージに反して「ファスティング」では基礎代謝が下がりにくい
  • 「カロリー制限」よりも、「胃にモノを入れる回数を減らす(ファスティング)」にフォーカスしたほうが、ダイエットは成功しやすい

 

『トロント最高の医師が教える 世界最強のファスティング』の実践

著書では、「ファスティングの5つのレベル」が設定されている。

  • レベル1……間食をやめる
  • レベル2……朝食を抜く
  • レベル3……朝食と昼食を抜く
  • レベル4……1日間(24〜36時間)のファスティング
  • レベル5……2日間(48時間)のファスティング

まず、レベル1の「間食をやめる」だけでも、かなり効果がある。

レベル2の「朝食を抜く」は、『空腹こそ最強のクスリ』における「16時間ファスティング」ど同じ。

レベル3は、いわゆる「1日1食」。

著者は、「レベル3」から「レベル4」の段階が一番ハードルが高いと言っていて、最大の効果を期待したいなら、「2日間(48時間)のファスティング」を勧めている。

ファスティングのレベルを設定しているが、必ずしもレベルを上げていかなければならないわけではなく、「健康上の問題を達成できている」のであれば、そこで止めてしまって構わないと著者は述べている。

1ヶ月以上体重の変化が見られず、もっと変化が必要だと感じたり、目標を早く達成したいというモチベーションがある場合は、ひとつ上のレベルのファスティングを実践することが推奨されている。

ファスティングは、必ずしもダイエットのために行うものではないが、体脂肪を減らす上でもファスティングは効果的で、そのための実践を指導する内容だ。

なお本書では、「間欠ファスティング」という、「24時間の何も食べない日」と「24時間の普通に食べていい日」を交互に繰り返すファスティングも推奨されている。あくまで欧米の患者を対象にしたものだが、著者の理論に沿ったダイエット法として一定の効果があるとされている。

 

『脳と体が若くなる断食力』の概要

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山田豊文『脳と体が若くなる断食力』は、「山田式ミネラルファスティング」という支持者の多いファスティングメソッドを提唱している著者の本で、3日以上の長期間なファスティングも扱っている。

3日以上のファスティングは、ミネラルを補給しながら行うべきという主張が特徴的。

 

『脳と体が若くなる断食力』の実践

『脳と体が若くなる断食力』では、4つのコースが設定されている。

  1. 少食コース(1日2食以下)
  2. 1日断食コース(24時間)
  3. 週末断食コース(2〜3日)
  4. 1週間断食コース(7日間)

驚くべきは、1週間の断食コースまで想定されていること。

本書では、2日以上の断食をするにあたっての注意点が述べられている。

2日以上の断食は、「準備期間」と「回復期間」を設ける必要があり、「準備期間」の段階から、過食を控えるクリーンな食事をして、「回復期間」は、胃腸に負担をかけず、ゆっくり蘇らせるように、消化の良いものを少しずつ食べる必要がある。

また、2日以上の断食をする場合、ミネラルが豊富に含まれた酵素ドリンクを摂取することが、本書では推奨されている。

いちおう紹介すると、書籍では、以下のものが推奨されている。

また、1週間以上の断食もコースとして想定されているが、3日を超える長期期間のファスティングは、自分ひとりの独断ではなく、管理されたプログラムの元で行うことが推奨されている。

 

『脳と体が若くなる断食力』の問題だと思った点

影響力のある著者が書いたものなので取り上げたが、山田豊文『脳と体が若くなる断食力』に関しては、あまりエビデンスベースドで書かれているとは思えない内容だった。

本書では、断食をしながら成果を出しているアスリートなどを例に挙げて、「断食をしている○○さんは成功している」という主張が展開される。

しかし、「断食をして成功している人」をいくら列挙しても、それは科学的なエビデンスではない。「断食をしないで成功している人」も世の中には存在するからだ。

というか、トップアスリートの中で、「断食をしている人」と「断食をしていない人」では、後者のほうが多数派だろう。であるならば、断食が成功の要因と主張するのは科学的ではない。(科学的であるためには統計的に見る必要がある)

「個別の事例を列挙する」のは、説得力を増す方法ではあっても、科学的な検証ではない。

対照的に比較・検討することが科学の手順だが、その観点からは、本書の記述は十分に信頼に足るものとは言えない。

ただ、この手の本が良くないと一概に言うつもりもない。「ファスティング」は一定の我慢と意志力が要求される。「断食のメリットをたくさん挙げる」やり方は、実践・継続するモチベーションを読者に与えるのが目的であるなら合理的。

また、『脳と体が若くなる断食力』の他にも、船瀬俊介『できる男は超少食 空腹こそ活力の源!』石原結實『空腹はなぜいいか?』といった書籍も読了したが、エビデンスに十分に配慮されているとは言えないものの、ファスティングのモチベーションを与えてくれる内容だった。

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書かれている内容すべてを鵜呑みにするべきではないと思うが、ファスティングを頑張りたい人にとっては、有用な本だと思う。

ただ、ファスティングの参考にするのであれば、上で紹介した『空腹こそ最強のクスリ』『トロント最高の医師が教える 世界最強のファスティング』のほうが、科学的な視点で書かれているのでおすすめである。

2日を超える長期ファスティングだが、たしかに空腹の時間が長いほうが、オートファジーとミトコンドリアが活性化する程度が強まる。だが、その効果と、長期ファスティングをする労力を秤にかけたときに、「2日を超えるファスティングをするメリットがあるか?」は、なかなか疑わしい。

『トロント最高の医師が教える 世界最強のファスティング』では、最大の「レベル5」でも「48時間(2日間)」に設定していて、「健康上の問題を達成できている」ならば、より低いレベルのファスティングで問題ないとしている。これが科学的に妥当な基準だと思う。

もっとも、『脳と体が若くなる断食力』でも、むやみに長いファスティングを推奨しているわけではない。

ファスティングにハマって、「長期ファスティング」にどんどんチャレンジしていくのも、あまり推奨されるものではないと思うので、以下では、「長期ファスティング」のデメリットや注意点についても書いていきたい。

 

長期ファスティングのデメリットと、酵素ドリンクに意味がない理由

48時間を超えてもなお続けるような「長期ファスティング」のデメリットと、「酵素ドリンク」の効果が疑わしい理由を解説していきたい。

 

長期ファスティングはキツいし疲れる

「長期ファスティング」のデメリットは、単純に「疲れる」こと。

36時間程度のファスティングであれば、むしろ疲れが取れて、リラックスできる場合が多いかもしれない。だが、「長期ファスティング」になると、長く何も食べないからこそ、体力と気力を使う。

「食欲を我慢すること」「空腹のストレスに耐えること」に、多くのリソースを持っていかれるので、仕事と両立するのはかなり難しい。

自分は3日間のファスティングを経験したことがあるが、2日目の後半からはまともに仕事ができないような状態で、3日目からはさらに段違いにキツい。ほとんどのリソースを「我慢すること」に持っていかれる感じがした。

「長期ファスティング」と「仕事」を同時にやることは、ほとんどの人にとって不可能だろう。実際に、たいていの場合、2日以上の断食は「仕事のない週末」や「長期の休み」にやることが推奨される。

断食中は、短期的なエネルギー(グリコーゲン)が枯渇した状態になり、糖をエネルギーとして消費する経路から、脂肪をエネルギーとして消費する経路に体が切り換わる。それは良い影響のあることでもあるのだが、体質が改善されるがゆえに疲れが伴う。

  • 食欲を我慢するために使うリソース
  • 体質の変化のために消費するリソース

これらは、「長期ファスティング」になると、決して小さいものではないので、まともに仕事ができる状態ではなくなる。

また、例えば3日間ファスティングをやる場合で、その3日間だけではなく、前後に「準備期間」と「回復期間」をそれぞれ2日ほど設定しなければならないので、1週間はファスティングのために気を使う必要があ。

「他のことに使うエネルギーがなくなる」「準備などを含めて多くの時間がかかる」のが、「長期ファスティング」のデメリットだ。

 

ファスティングにハマってしまう理由

人は、ファスティングにハマると、どんどん長期のファスティングをやりたくなる傾向があると思う。かくいう自分もそんな感じだった。

自分は3日間のファスティングをしたことがあるが、「断食にハマる」人の気持ちがよくわかる。ファスティングを終えたあとは、消化器官がリセットされたようなスッキリ感があり、肌がキレイになり、体重が減る。

3日間もファスティングをすると、「やり遂げた!」という明確な達成感があり、さらに身体の良い変化も伴うので、大変すばらしい気持ちになる。

そのため、苦しい思いをしても(あるいは、苦しい思いをしたからこそ)、「またやりたい!」「もっと長くやってみたい!」と思ってしまうのだ。

しかし、むやみな「長期ファスティング」は、精神的に得られるものは多くても、肉体的なメリットがあるかは定かではない。

『トロント最高の医師が教える 世界最強のファスティング』の書籍では、最大レベルで48時間とされているが、その設定が妥当だと思う。

最大でも2日間の「適度なファスティング」については、それが効果的であるという信頼に足るエビデンスがある。しかし、2日間を超えるような「長期ファスティング」については、苦痛に耐えてそれをやるだけのメリットがあると科学的に実証されているわけではないので、注意したい。

断食は、達成感を得られるがゆえに、「より長期の、過酷な体験を!」とスピリチュアルになってしまいやすい傾向があり、それが酷くなると、騙されて「高額な酵素系の商品」に大金を使ったりしてしまう。

3日を超えるファスティングを勧める意見は、肉体的な効果よりも精神的な効果を重視するスピリチュアルなものだと思って、注意したほうがいいです

 

酵素ドリンクは本当に意味があるのか?

「長期ファスティング」で推奨される「酵素ドリンク」だが、これはけっこう胡散臭い!

まず、値段が高すぎる!

なぜただの酵素にそんな値段がするのか謎だし、そもそも断食中に酵素を飲む意味はあるのだろうか?

「酵素ドリンク」の理屈として、「胃にモノを入れないと消化酵素が分泌されにくくなるので、外から酵素を取り入れることによって、ファスティングがより安全で効果的になる」みたいに説明されることが多い。

しかし、外部から酵素を取り入れても、タンパク質として体内で一度アミノ酸に分解されるのではないか。(ヒアルロン酸を経口摂取しても意味がないのと同じ理屈)

経口摂取で取り入れた酵素が、そのまま体内合成される酵素として使われるわけではない。そのため、「断食すると酵素が尽きるので、酵素ドリンクで酵素を補うといいですよ」という説明は、理屈が通っていない。

高額な「酵素ドリンク」は、おそらくニセ科学のボッタクリ商法なのだが、ファスティングにおいては「酵素ドリンクを使うのが当たり前」みたいになっている。

「長期ファスティング」をやりとげると、精神的に達成感があるが、そこに便乗すれば、高額な酵素を売りやすいのだと思う。

ファスティングをやりとげると身体に良い影響があるが、「純粋にファスティングのみ」の効果なのか、「酵素ドリンクのおかげでもある」のか、検証することは難しい。それを利用して高額商品を売りつける方法が「酵素」なのかもしれない。

ただ、自分は、「優光泉」という酵素ドリンクの梅味を試したことがあるが、たしかに断食中に飲むと「しっくりくる」感じがあり、酵素ドリンクにハマる人の気持ちもわかる。

ちなみに「優光泉」のやつも値段は高いが、希釈して飲む「原液」であることも考えると、実質的にはそこまでバカみたいな価格ではない。(ヤバいくらい高額な酵素ドリンクもあるが。)

自分は、「酵素ドリンク」を愛飲している人を否定するつもりはない。ただ、「断食に必須」のものではないので、効果を疑うならば、無理して買う必要はないだろう。

ちなみに、断食中は「ミネラル」が不足しやすいが、特別な酵素ドリンクを使う必要はなく、「塩」や「味噌」か「梅干し」を摂取すると良い。

長期ファスティングに酵素ドリンクは必要ないし、そもそも長期ファスティング自体がそれほど推奨されるものでもない

 

おすすめのファスティング法は?

上では、「長期ファスティングはあまりおすすめしない」という趣旨の内容を書いてきたが、ファスティング自体には、科学的に有効性が認められている。

「日常生活に組み込める無理のないファスティング」は、健康法・ダイエット法として、積極的に推奨される。

「ファスティングをやってみたい」と思った人におすすめのファスティング法は、「16時間ファスティング」と「36時間ファスティング」だ。

また、ダイエット目的で行うなら、「1日おきファスティング(間欠ファスティング)」もおすすめ。

 

16時間ファスティング

「16時間ファスティング」は、最も簡単なファスティング法で、『空腹こそ最強のクスリ』で推奨されている。

朝食や夕食のどちらかを抜いて、間食をやめれば、それだけで「16時間ファスティング」になる。慣れれば「毎日」でも可能だ。

ファスティング未経験者は、まずは「16時間ファスティング」を当たり前にできるようになろう。

 

36時間ファスティング

「オートファジーをより活性化させたい」「身体をリセットして食習慣を見直すキッカケを作りたい」というのであれば、「36時間ファスティング」がおすすめ。

「36時間ファスティング」は、もちろんキツくないわけではないのだが、実はそこまでハードルが高くない。

「36時間」何も食べないうち、2回ぶんの「睡眠時間」を入れることができるので、思ったよりもキツくない。

例えば、金曜日の夜8時に食べ終わったあと、日曜日の朝8時まで何も食べないと「36時間ファスティング」になる。

金曜日の8時にご飯を終えた場合、本格的に空腹でキツくなってくるのは、翌日の土曜日の昼頃からだろう。空腹に耐えなければならないのは、「土曜日の昼」から「土曜日の夜眠るまで」の「12時間ほど」の間だ。

土曜日の夜12時から、8時間ほど眠ったとして、それですでに「36時間ファスティング」は終了する。

「36時間ファスティング」とはいえ、「食後のそこまでお腹が空いていない8時間」と「睡眠時間8×2時間」を差し引くと、36−(8+8×2)=12で、「空腹でキツいのは実質12時間」になる。

キツくないわけではないのだが、本格的な空腹は「12時間」だけなので、その気になればわりとこなせるし、週末などに普通に実践できる。

なお、「2日間ファスティング(48時間)」となると、「本格的な空腹の時間」が「12時間」から「24時間」になるので、「36時間」と「48時間」の間に大きな壁がある。

「36時間」はわりと余裕。「2日間」となると段違いにキツくなる。自分は「3日間」まで体験したことがあるけど、別次元のキツさだった!

 

1日おきファスティング(間欠ファスティング)

「1日おきファスティング(間欠ファスティング)」は、上で概要を述べた『トロント最高の医師が教える 世界最強のファスティング』や、『トロント最高の医師が教える 世界最新の太らないカラダ』の書籍で推奨されている方法。

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1日おきに「24時間ファスティング」や「36時間ファスティング」を行う。

  • 「24時間の食べない時間」と「24時間の食べていい時間」を繰り返す
  • 「36時間の食べない時間」と「12時間の食べていい時間」を繰り返す

この「間欠ファスティング」が、「ファスティング」をダイエットに活かす上で有効とされている。

科学的なアプローチ込みの話なので、詳しくは書籍を読んでもらいたいが、「痩せるためには、食べる量よりも、食べる頻度を減らす必要がある」という発想からきている。

「24時間断食」は、ハードルが高いように思えるが、「1日1食」を「23時間断食を毎日しているようなもの」と考えると、「1日おきに24時間断食」というのは、そこまで高いハードルではない。

「間欠ファスティング」は、日本では知名度はまだ低いが、海外では医師に指導されることもあるダイエット方法。ただ、あくまで(肥満に悩む)欧米人への指導で行うダイエット法なので、そもそも肥満が少ない日本人は、無理に真似する必要はないかもしれない。

重要なのは、「食べない時間を増やすことによってインスリン値を下げる」という理屈の部分で、最も簡単な「16時間ファスティング」や、「36時間ファスティング」を週に1回の頻度で行うだけでも、ダイエット効果は期待できる。

「間欠ファスティング」をやるなら、『トロント最高の医師が教える……』の書籍を読んで、内容をちゃんと理解してから行うほうがいいと思う

 

以上、「ファスティング」について詳しく解説してきた。

「3日間ファスティングの体験談」「自分で断食をしていて気づいたことまとめ」といった記事も書いているので、よければ以下も参考にしてほしい。

3日間断食をしてみた体験談!ファスティングで何キロ痩せた? 定期的に断食して気づいたことまとめ【ファスティングの感想】

 

当サイトでは、「ダイエットの基礎知識まとめ」「ダイエット向けおすすめ食品のまとめ」といった「美容・ダイエット」関連の記事も書いているので、この記事が参考になったという方は、以下も参考にしていってほしい。

ダイエットの正しい知識まとめ!基礎代謝、GI値、チートデイなどを理解できているか? スーパーやコンビニで買えるダイエット向け食品のおすすめを紹介

 

当サイトは、メンズ美容の専門サイトで、「男性のルックス向上ノウハウ」などをまとめている。興味があれば以下の記事も見ていってほしい。

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