「断食(ファスティング)」は、必ずしもダイエットのためにやるものではないが、正しい方法を踏まえれば、ダイエットに活かすことができる。
特に、「太っている人が痩せるには、断食が有効」であるという、科学的エビデンスを踏まえた理論的根拠がある。
今回は、理論的な根拠込みで、「肥満からのダイエットに断食が有効である理由」と「ダイエットに適した断食のやり方」を解説する。
なお、これを書くベースになっているのは、ジェイソン・ファン『トロント最高の医師が教える世界最新の太らないカラダ』という書籍。
目次
『トロント最高の医師が教える世界最新の太らないカラダ』について
まず、この記事は、ジェイソン・ファン『トロント最高の医師が教える世界最新の太らないカラダ』の内容をベースにしている。
本書は、個人的にはとても良い書籍だと思っているが、「わかりやすくダイエット法を教えてくれる本」だと思って読むと、期待を裏切られるだろう。
タイトルから受ける印象と、実際の内容が、大きく乖離している。
本書の原題「The Obesity Code」は、「肥満の原因」みたいな意味で、邦訳タイトルが「売るためとはいえ、やりすぎ」なのだ。
本書は、「肥満」に関する様々なトピックを、研究結果を引用しながらひとつずつ議論していく内容。
記述が親切とは言えないし、「本当にそのデータからその結論?」と言いたくなるところもあるが、そういうのも含めて、吟味しながら読むタイプの書籍だ。
個人的には読む価値のある本だと思ったが、ダイエットに興味のある一般人におすすめしやすい本とは言えない。
本書は、ダイエット法として「断食(ファスティング)」をおすすめしているのだが、この記事では、具体的なダイエット法に繋がる部分だけをピックアップして、なるべく簡潔にわかりやすく伝えることを目指した。
結論は、「カロリー制限」ではなく「食事頻度制限」をしろ
結論から先に言う。
『トロント最高の医師が教える世界最新の太らないカラダ』が提示するダイエット法は、一言で言うと、「カロリー制限」ではなく「食事頻度制限」をしろになる。
肥満の人がダイエットをする上では、「摂取カロリーを減らす」よりも「食べる頻度を減らす」を意識したほうが、長期的なダイエットの成功率が高い。
実は本書では、肥満にまつわる色々なトピックを議論しながら、「いかに痩せるのが難しいか?」が延々と書かれている。
「ダイエットには断食がおすすめですよ!」みたいなニュアンスではなく、「デブが痩せるって基本的には無理だけど、可能性があるとすれば断食かな……」という内容。
なぜその結論になるかというと、「ホルモン」が関係している。
根本の原因は「ホルモン」にある
「ホルモン」は、人間の体内で分泌され様々な働きをする物質だが、「太るかどうかはホルモンが決める」という見方を著者はしている。
ホルモンと体脂肪率には密接な関係がある。男性と女性とでは、女性のほうが体脂肪率が高くなりやすいが、それは女性のほうが不摂生だからではなく、「ホルモン」の問題だ。
「食べなければ痩せる」は事実だが、「ホルモン」は、食欲に大きく働きかける。意志の力によってカロリー制限しようとしても、その「意志の力」を規定しているのが「ホルモン」なのだ。
ホルモンが食欲を決めているので、ホルモンの分泌が「太る」ような状態であれば、意志の力でそれに逆らうのは、かなり難しい。
「意志の力でダイエットをしようとしてもほとんどの人が失敗する」ので、「ホルモンにアプローチするしかない」という話になる。
太る原因となるホルモンとして挙げられているのが、「インスリン」だ。
インスリンは、血糖値が上がると分泌されるホルモンで、血中の糖分を脂肪に変換して身体にため込む。(詳しくは、「ダイエットの基礎知識まとめ」を参考にしてほしい。)

実は、肥満の人は、インスリンが効果を発揮しにくくなった状態である「インスリン抵抗性」になっているという。
「インスリン抵抗性」の要因は
- 一度に多すぎるホルモンが分泌されること(大食いが原因の大量のインスリン分泌)
- 絶えず刺激が続くこと(間食が原因の頻繁なインスリン分泌)
などが挙げられる。
「インスリン抵抗性」になると、インスリンの効きが悪くなるがゆえに、インスリンが過剰分泌されやすい身体になる。
肥満は、「インスリン抵抗性」が高い状態で、そうなると、食事内容に関係なく、インスリンが多量に分泌される。
インスリンが分泌されるほど太りやすく、太っているとインスリンが過剰分泌されやすい。つまり、「太っているから太りやすい」という悪循環にハマった状態が「肥満」なのだ。
太っているほど痩せるのが難しくなる悪循環
研究によると、肥満だった時間が長い人ほど、単純なカロリーの収支では辻褄が合わないくらい、痩せるのが難しいらしい。
「もともと太っていた人ほど痩せにくい」という、ダイエットを試みる人にとっては絶望的なデータがある。
太っている人ほど「インスリン抵抗性」が高く、「インスリン抵抗性」が高いと、食べ物に関係なく、インスリンが多量に分泌される。
太っている人は、「カロリー制限した食事」や「糖質制限した食事」であっても、普通の人よりも多くのインスリンが分泌される状態になっている。
そして、インスリン値が高いと、満腹信号を出すレプチンなどのホルモンの働きが阻害される。そのため、強い空腹感を感じやすく、「カロリー制限」などのダイエットを長期的には挫折してしまう。
「太っているから食べすぎてしまう」という悪循環こそが「肥満」。
ちなみに、「ホルモンが原因なら、投薬などでインスリン値を下げればいいのではないか?」と思うかもしれないが、血糖値が上がったときにインスリンが機能しないのは、いわゆる「糖尿病」の状態なので、めちゃくちゃ危険。
「インスリンも分泌されないし、血糖値も上げない」ためには、何も食べない……つまり「断食」しかない。
なぜカロリー制限ダイエットは失敗してしまうのか?
カロリー制限ダイエットのデータを見ると、「短期的には減量に成功するが、長期的には前よりも体重が増える」というヒドい結果に終わる場合が多いようだ。
なぜそうなるかというと、「太っている人は、カロリー制限をした食事でも、インスリンが大量に分泌されてしまう」から。
理屈としては以下のようになる。
- 肥満の人は、少量でも食べ物を胃に入れると、インスリンが多く分泌される体質になっている
- ホルモンは無意識的に食欲に働きかけるので、「もっと食べたい」という気持ちが湧く。長期的には、普通の人はそれに耐えられない
- カロリー制限をすると最初は順調に痩せるが、身体には「ホメオスタシス(恒常性維持機能)」があるので、基礎代謝を落として消費カロリーを減らそうとする
- 基礎代謝が下がってしまった状態で、ホルモンの働きによりカロリー制限ダイエットが崩壊してしまい、下手するとダイエット前よりも太る
「カロリー制限して代謝が落ちる」→「ホルモンに意志が規定されるのでダイエットが崩壊する」→「代謝が落ちた状態で摂取カロリーを戻すと前より太る」という最悪のコンボ。
このような、「太っているがゆえに痩せられない」という悪循環を抜け出すためには、「ホルモン」という根本の原因をなんとかする必要があり、そのための方法が「食事頻度制限(断食)」なのだ。
つまり、「インスリン抵抗性」から抜け出すために、「インスリンが分泌されていない時間」を増やす必要がある。
デブは、ちょっと食べてもインスリンがたくさん出る体質になってしまっているので、「断食」するしかない。
「間欠ファスティング」によるダイエット
「食事頻度制限」の方法として本書で推奨されているのは、「何も食べない日」と「普通に食べていい日」を1日おきに繰り返す「間欠ファスティング」だ。
「24時間」か「36時間」の「間欠ファスティング」が良いという。
- 「24時間の食べない時間」と「24時間の食べていい時間」を繰り返す
- 「36時間の食べない時間」と「12時間の食べていい時間」を繰り返す
のが、「間欠ファスティング」。
カロリー計算なんて面倒くさいことはしなくていいから、「とにかく食べない時間を確保しろ!」というのが重要なポイント。
肥満は、「太っているからこそ太る」という悪循環なので、「断食」で「インスリンが分泌されていない時間」を増やすことによって、正常な体質に戻していくアプローチが有効。
なお「断食」は、イメージに反して、「カロリー制限」よりも基礎代謝が落ちにくいし、筋肉量もほぼ落ちないというデータも示されている。
「断食」は、絶望するほどのキツさではない
「理屈はわかったけど、24時間も断食するなんて現実的じゃない」と思うかもしれない。
だが、「24時間断食」は、未経験の人が想像しているよりは、ずっとハードルが低い。
例えば、「1日1食」を実践している人は、「ほぼ24時間断食」を毎日続けているようなもの。それに比べれば、「1日おきの24時間断食」は、そこまで難しくない。
肥満は、ホルモンによって食欲を駆り立てられている状態なので、食欲が正常になるまでは、「24時間断食」でもめちゃくちゃキツく感じるかもしれないが、慣れれば全然たいしたことない。
現に、「1日1食」を習慣にしている人は世の中にたくさんいる。
「24時間断食」が難しい人は、「16時間断食」から試してみるといい。
青木厚『「空腹」こそ最強のクスリ』という書籍で指導されている「16時間断食」は、「我慢できなくなったらナッツやヨーグルトなら食べていい」など、とてもイージーな内容なので、まずは本書で紹介されている方法でやってみることをおすすめする。
『トロント最高の医師が教える世界最新の太らないカラダ』の内容の注意点
『トロント最高の医師が教える世界最新の太らないカラダ』は、「太っている人は断食するしかない」という内容で、そのロジックについては、上で紹介してきた通りだ。
ただ、ここで言う「太っている人」は、欧米の基準における「肥満」のこと。日本は世界的にも肥満が少ない国であり、この話が当てはまる日本人はそれほど多くはないかもしれない。
「カロリー制限」より「食事頻度制限」という視点は重要だが、「太っている人にとって効果的な方法」であるのが前提。
「肥満ではないが、見た目を良くするためにもっと痩せたい」という人は、普通に「カロリー制限」や「糖質制限制限」が有効な場合もある。
また、「断食をする期間」だが、本書では「24時間」や「36時間」が推奨されていて、「長く断食するほど良い」と言っているわけではない。
断食の情報を調べると、「3日間断食」などが出てくることが多いが、長くやったからといってそのぶんダイエット効果があるわけではない。(ダイエットのための断食は、あくまでホルモンを正常に戻すのが目的)
ちなみに断食は、「36時間」までは比較的ラクにできるが、「48時間」を超えると段違いのキツさになる。
仕事との兼ね合いや、健康上のリスクなども考えた場合、「36時間」を超えるような断食を無理に行うメリットはないと思う。
以上、「肥満から痩せるには断食が有効な理論的根拠」を書いてきた。
当サイトでは、「ファスティングの基礎的な解説」や、「断食の体験談」も書いているので、よければ以下の記事も参考にしてほしい。



また、当サイトは、「メンズ美容」を専門に扱っている。当記事の内容が参考になり、なおかつ美容やオシャレに興味がある男性は、以下の記事などを読んでみてほしい。
