「魚の油がカラダに良い」という話を聞いたことのある人は多いのではないだろうか。
よく、「魚を食べると頭が良くなる」とか「血液がサラサラになる」とか言われる。
「ホントかよ!」とツッコみたくなるような言葉だが、実は、まったく無根拠なわけではない。
魚の油に含まれる「DHA」と「EPA」には、「脳機能の向上」や「循環器系(血液や血管)の状態改善」といった効果が、実際にあるとされている。
今回は、「魚」の健康効果が、どういう理屈になっているのかを解説したい。
目次
魚(サバ)の栄養成分表示
まず、魚100gあたりの栄養成分を載せる。
ひとくちに魚と言っても、魚の種類や調理法によって栄養価は異なるが、ここでは「サバ缶(水煮)」の栄養成分表を載せる。
エネルギー:174kcal
たんぱく質:20.9g
脂質 :10.7g
炭水化物 :0.2g
鉄 :1.6g
亜鉛 :1.7g
ビタミンD :11.0μg
ビタミンB1:0.15mg
ビタミンB2:0.40mg
ビタミンB6:0.36mg
「サバ(鯖の水煮)」100gの成分表示。データは「食品成分データベース」から。
成分表からわかるように、サバは、「タンパク質」がとても豊富に含まれている。
また、「ビタミンB群」が豊富で、特に、脂質の分解をサポートする「ビタミンB2」と、筋肉の合成をサポートする「ビタミンB6」の含有量が多い。
また、日光にあたることでつくられる栄養素で、カルシウムの吸収を促進し、免疫機能を調節する「ビタミンD」を豊富に含む。
「鉄」や「亜鉛」などのミネラルも含まれていて、総合的に栄養価の高い食品と言える。
だが、何より重要なのは、サバの「油」に含まれている「DHA(ドコサヘキサエン酸)」、「EPA(エイコサペンタエン酸)」という脂肪酸だ。
サバ100gのうち、「DHA」が「1.3g」、「EPA」が「0.93g」含まれるとされている。
「DHA」や「EPA」は、「オメガ3脂肪酸」に分類され、「オメガ3」の1日の摂取基準は、成人男性で「2.0〜2.4g」、成人女性で「1.6〜2.0g」。
サバ缶は100gあたり、約2.2gの「オメガ3脂肪酸」が含まれていて、サバ缶の一般的な容量は150〜250gなので、「サバ缶」を1缶食べれば、一日に必要な「オメガ3」を十分に摂取することができる。
もちろんサバ以外の「魚の油」にも、「DHA」や「EPA」が含まれている。
では、魚に含まれる「良い脂質」が、具体的にどんな健康効果があり、なぜそのような効果を持つのかを解説していく。
「DHA」で「頭が良くなる」ってどういうこと?
「サカナを食べると頭がよくなる」なんて歌詞の歌があるが、「そんなわけないだろ、うさんくさい!」と、真っ当な思考力を持った人は思うだろう。
実際のところ、勉強ができるようになるためには、勉強するしかない。
だが、「脳機能の向上」といった点では、「DHA(ドコサヘキサエン酸)」は、効果が見込めるとされている。
人体のほとんどは「タンパク質」でできているのだが、「細胞膜」や「ホルモン」は「脂質」が原料。
「タンパク質」ほど量は必要としないが、「脂質」もまた、身体を作るのに必要不可欠な栄養素だ。
そして、「脳」や「網膜」などの神経系は、「脂質」の割合が高い。
水分を除いた「脳」の有形成分のうち、タンパク質は「35%」で、脂質は「65%」と言われている。
「脳」は、特に「脂質」が重要な部位なのだ。
「DHA」は、「良質な脂質」であり、脳や神経の発達において重要な栄養素であることがわかっている。
「頭が良くなる」と言われる根拠として、ラットを迷路で走らせる実験などで、「DHA」が多く含まれる油を食べせた場合のほうが、脳のパフォーマンスが向上するという研究データがあるからだ。
「DHA」を摂取しただけで勉強ができるようになるわけではないが、勉強に必要な集中力や記憶力など、「脳機能の向上」に、「DHA」が効果的とされている。
「EPA」で「血液がサラサラに」ってどういうこと?
「血液がサラサラ」というのも、何か頭が悪そうな言葉で、あやしげな感じがする。
ただこれも、デタラメというわけではない。
むしろ、「EPA(エイコサペンタエン酸)」は、「DHA」以上に、薬理的な作用が明確な、信頼性の高い栄養素と見なされている。
「EPA」は、すでに医療の現場で、高脂血症や動脈硬化の治療薬として使用されている。
実際に、「血液サラサラ」と言っていいような効果があるのだ。
この理屈を簡易的に説明すると、「オメガ3脂肪酸(EPA)」は、「オメガ6脂肪酸」の摂りすぎに対して、効果を持つ。
「オメガ3」と「オメガ6」の脂肪酸は、正反対の作用を持つ。
- 「オメガ3」……細胞膜を柔らかくする
- 「オメガ6」……細胞膜を硬くする
肉や卵や乳製品などの脂肪分は、「オメガ6」の比率が高い。
そのため、普通に食事をして脂質を摂取しすぎると、「オメガ6」の過剰摂取になり、「細胞膜を硬くする」ほうにバランスが傾いてしまう。
それに対して、細胞膜を柔らかくする作用のある「オメガ3」を摂取すると、「硬くなりすぎ」が原因の病気に対する解決策になる。
高齢で身体の器官が衰え、さらに細胞膜が硬くなると、血液や血管などの「循環器系」が問題になりやすく、それに対して「EPA」が医薬品として使われることがある。
もっとも、循環器系に限らず、「オメガ3」と「オメガ6」のバランスをとって、細胞膜の状態を良くすることは、体調やパフォーマンスに直結する。
普段から食品で「オメガ3」を摂ることのメリットは大きい。
そして、重要な脂肪酸である「DHA」や「EPA」を最も多く含むのが、「魚の油」なのだ!
なお、脂質についての詳しい話は、「「良い脂質」とは何か?オメガ3を含む食品と健康に良い根拠」という記事で書いているので、より詳しくは以下を説明してほしい。

上の記事で解説しているが、「DHA」や「EPA」と同じく「オメガ3脂肪酸」である「αリノレン酸」は、クルミやチアシードやアボカドなどの植物に多く含まれる。
「DHA」「EPA」「αリノレン酸」は、どれも「オメガ3脂肪酸」に分類され、性質としては似たようなもの。
「αリノレン酸」は、体内で「DHA・EPA」に変換可能で、「DHA」と「EPA」は相互に変換可能。
ただ、「αリノレン酸」から「DHA・EPA」の体内変換は、変換効率が良いわけではないので、「DHA・EPA」を効率的に摂取しやすいのは「魚の油」だ。
「DHA」や「EPA」が豊富に含まれている魚は?
基本的に、海産物には、「DHA・EPA」が豊富だ。
魚はもちろん、蟹、貝、牡蠣なども、「DHA・EPA」を含む。
なぜなら、海中の植物プランクトンが「αリノレン酸」を含んでいて、それを餌にする生物が、「DHA・EPA」を体内に蓄えるから。(そのため、川魚よりも海魚のほうがDHA・EPAが豊富な傾向がある。とはいえ、川魚に含まれていないわけではない)
「DHA・EPA」を含む、食用として一般的な魚として
- サバ
- イワシ
- サンマ
- マグロ
- サケ
- アジ
- サワラ
- カツオ
- ブリ
- ウナギ
- アナゴ
などなど、ほぼすべての食用の魚の脂肪分には「DHA・EPA」が含まれている。
蟹、貝、牡蠣の油も「DHA・EPA」を含むが、含有比率や価格などを考えると、「魚の油」から摂取するのが効率的。
魚の中でも特に「DHA・EPA」が豊富なのは、「サバ」や「イワシ」のような青魚。
「スケトウダラ」のような白身魚にも、「DHA・EPA」は含まれているが、脂肪酸なので、脂質が少なければ、含有量は下がる。また、「オメガ3」は熱に弱いので、揚げ物にすると効果が失われやすい。
脂質の少ない魚を揚げ物にする「白身魚のフライ」などは、「DHA・EPA」を目的で食べるのにはあまり向いていない。
「DHA」「EPA」を摂るなら、「サバ缶」が最強
「DHA・EPA」などの「オメガ3脂肪酸」は
- 加熱すると酸化してしまう
- 空気に触れても酸化してしまう
という特徴がある。
熱を加えすぎたり、古くなってしまった魚は、「DHA・EPA」を摂取する上ではあまり適していない。
おすすめなのは、「サバ缶」だ。
「缶詰」は、それ自体が非常に優れた保存方法なので、保存料を必要とせず、火を通すのも最低限。
空気に触れないので油が劣化しないし、長期間保存できて、好きなときにすぐ食べられる。
自分はいろいろと試してきたが、「栄養素」「手軽さ」「おいしさ」の総合的な面で、「サバ缶が最強」であるという結論に至った。
特に、健康効果の高い「味噌」とサバの組み合わせである「さば味噌」は、健康とおいしさを兼ね揃えた最高のレシピだと思う。
もちろん、「さばの水煮」も、様々なメニューに応用できる、とても素晴らしい食品だ。
なお、「サバ」に限らず、「イワシ缶」や「サンマ缶」でももちろんOK。
なお、「ツナ缶」は、高タンパクで健康的な食品だが、ノンオイルのものは、「DHA・EPA」を摂るためには向いていない。当然だが、脂質がゼロなら「DHA・EPA」もゼロだ。
「サバ缶」などの魚の缶詰の、欠点を挙げるすれば、食べ終わったあとの処理が面倒なことだろう。(魚の匂いが漂ってくるので、自分は洗剤で洗うようにしている。)
「サバ缶」以外でおすすめなのは、「サーモンの刺し身」。
「DHA・EPA」が豊富で、味が良いのも素晴らしい。
カロリーが気になるなら「フィッシュオイル」のサプリメントが有用
「DHA・EPA」は脂肪酸なので、含まれる量は、脂質の量と基本的に比例する。
なかには
- 「脂質制限ダイエット」をしている
- 「サバ缶を定期的に」となるとカロリーが気になる
- 魚の味があまり好きではない
という人もいるかもしれない。
その場合は、「フィッシュオイル」のサプリメントがおすすめ。
「フィッシュオイル」は、魚の油の「DHA・EPA」が豊富な部分を固めたもの。
1粒で、1日に必要な量を摂取することができる。
飲み込んだあともちょっと生臭さがあるのが欠点だが、効率的に「DHA・EPA」を摂取できる。
以上、「魚の油」の健康効果について解説してきた。
当サイトでは、健康や美容に良い食品を他にも紹介しているので、気になる方は以下の記事も読んでいってほしい。




