ランニング、サイクリング、水泳などの「有酸素運動」と、筋トレのような「無酸素運動」は、区別されて論じられることが多い。
今回は、筋トレのような無酸素運動との比較を意識しながら、「有酸素運動のメリットとデメリット」を解説していく。
いちおう定義を説明しておくと、筋肉を動かすエネルギー源に酸素が使われるかどうかで分類される。
- 有酸素運動……筋肉を動かすために酸素を使う。長期間の持続的な運動
- 無酸素運動……筋肉を動かすために酸素を使わない。短期間の強度の高い運動
「100m走」は、呼吸しながら走るものの、筋肉を動かすエネルギー源として酸素が使われないので、実は「無酸素運動」に分類される。
ただ、たいていの場合、「無酸素運動」は「筋トレ」のことを指す。
「筋トレ(無酸素運動)」と「ジョギングなど(有酸素運動)」は、対比されて論じられることが多い。
ちなみに、「筋トレ」のほうのメリットとデメリットは、前回の記事で書いた。

今回は、ランニングなどの「有酸素運動」について、「筋トレとどちらが良いのか?」という視点も踏まえつつ、メリットとデメリットを書いていく。
目次
有酸素運動のメリット1:筋肉もちゃんと鍛えられる
「有酸素運動か、筋トレか?」という議論は多いが、前提として踏まえておきたいのは、「有酸素運動でも筋肉が鍛えられる」ということ。
ジョギング、サイクリング、水泳、ダンスなどの「有酸素運動」も、当然ながら筋肉が使われる。
例えば、普段からほとんど運動をしない人が、久々にランニングをした場合、翌日は全身が筋肉痛になるだろう。
「有酸素運動か、筋トレか?」というのは、ある程度以上のレベルの話であって、普段から運動不足の人にとっては「有酸素運動も筋トレ」なのだ。
つまり、「有酸素運動」にも、「筋肉量が増加する」などの「筋トレ」と同じメリットがある。
もちろん、有酸素は筋トレの上位互換というわけではなく、筋肥大を目指すのであれば、筋トレのほうが効率的だ。
ただ、有酸素運動だからといって、筋肉がつかないわけではないのだ。
有酸素運動のメリット2:心肺機能が向上する
有酸素運動の大きなメリットは、酸素を取り込み、全身に酸素を供給する「心肺機能」が向上すること。
心肺機能は、ほとんどのスポーツにおいて基礎となるものであり、ウォーミングアップやトレーニングとして「ランニング」などの有酸素運動を取り入れる競技はとても多い。
スポーツに限らず、日常生活でも、心肺機能が向上することのメリットは多い。
酸素を効率よく取り入れることができると、血行が促進されやすく、不調が減ったり、疲れにくくなる。
有酸素運動のメリット3:脂肪燃焼効果が高い
有酸素運動は、脂肪を燃焼する効果が高い。
その理由は、運動時間が長いほど、「脂肪」がエネルギー源として使われるようになるから。
- 短い時間に一気にエネルギーを使う……「糖」が使われやすい
- 長い時間じわじわエネルギーを使う……「脂肪」が使われやすい
という代謝の経路の違いがある。
実は、無酸素運動である「筋トレ」は、「糖」が重要で、糖質制限をすると筋トレのパフォーマンスは落ちやすい。
一方で、ランニングや水泳などの「有酸素運動」は、時間が長くなるほど「脂肪」が使われるので、糖質制限中でも意外と身体が動く。(競技レベルでは別だが)
「ランニングは20分以上すると良い」と言われるのは、運動時間が長いほど、「糖」ではなく「脂肪」がエネルギーとして使われやすくなるから。
ただ、詳しくは後述するが、有酸素運動を長時間行うのはデメリットもあるので、「長くやるほど良いわけではない」ことも踏まえる必要がある。
有酸素運動のメリット4:メンタルに良い
運動をすることのメリットに、「成長ホルモン」「テストステロン」「セロトニン」「ドーパミン」などのホルモンが分泌されやすくなる、というのがある。
「筋トレ」は、「成長ホルモン」「テストステロン」が分泌されやすいのに対して、「有酸素運動」は、「セロトニン」「ドーパミン」が分泌されやすい。
「有酸素運動」には
- 一定時間、均等なリズムを刻む
- 心拍数が高い状態を維持し、汗をかく
という特徴があり、このような種類の運動は、幸福ホルモンである「セロトニン」と、意欲や快楽に関係する「ドーパミン」が分泌されやすくなる。
さらに有酸素運動には、自律神経を整えたり、腸などの内蔵に良い刺激を与えて排便のリズムを整えるなどのメリットもある。
有酸素運動は、「メンタル」と「体調管理」において、特にメリットが大きいのだ。
ストレスの多い仕事や、創作的な仕事をしている人で、うつ病や不眠などのケアを意識するならば、有酸素運動が適している。
また、「ランニング」「ウォーキング」「サイクリング」は、外の空気を吸い、日光を浴びるキッカケになりやすく、それもメンタル面にプラスになる。
以上、「有酸素運動のメリット」を述べてきた。以降では、「有酸素運動のデメリット」について述べていく。
有酸素運動のデメリット1:痩せにくい身体になる
身体には、変化に対抗して元の状態を維持しようとする「ホメオスタシス」という機能がある。
有酸素運動を定期的に続けると、身体がその負担に適応して、カロリーを効率的に使うようになってしまう。
このメカニズムは、生存においては良いことだが、ダイエットにおいてはデメリットになる。
「ホメオスタシス」の機能は、運動せずに体重を落とすだけでも発動するが、有酸素運動を続けると特にカロリー消費が効率的になりやすいとされている。
「走って体重を減らす」を続けると、停滞期がやってきて、「たくさん走っているのに痩せない」状態になってしまいやすい。
対応策として、「身体を慣れさせない」ことが大事で、有酸素運動と筋トレを交互にするなど、身体への刺激に変化をつける必要がある。
有酸素運動のデメリット:故障のリスク
「筋トレ」は血管などがダメージを負いやすいのに対して、「有酸素運動」は慢性的な疲労の蓄積によって、関節などがダメージを負いやすい。
特に気をつけたいのは「ランニング」だ。
体重が気になってきたという理由で、走って痩せようとすると、太っているぶん膝に負担がかかるので、故障しやすくなる。
「ランニング」や「ジョギング」は、体調管理やメンタルケアのためには有効な運動だが、太っている人が痩せようとする手段としては推奨できない。
「太ったので痩せたい」という理由で有酸素運動をしようと思っている人は、「水泳」など、関節に負担がかかりにくい運動を選ぶ必要がある。
有酸素運動のデメリット3:老化の促進
運動をすると、老化の原因になる「活性酸素」が発生する。
適度な運動であれば、メリットのほうが上回るが、過度な運動は、アンチエイジングにとってむしろマイナスの結果をもたらしてしまう。
現役でスポーツをやっている人はともかく、健康と美容を考えるなら、「キツい有酸素運動」は、メリットよりもデメリットのほうが大きい。
有酸素運動において、特に気をつけたいのは「長くやりすぎる」こと。
ランニングなどの有酸素運動は、ドーパミンが多く放出され、一定の体力がついてくれば、1時間や2時間を超える長距離ランも、それほど苦もなく行えるようになってくる。
とはいえ、長く走ると、それだけ活性酸素が発生しやすく、カロリー消費も効率的になるのでそんなに痩せないし、故障のリスクも高くなる。
「気持ちよく1日30分ほど気持ちよく走る」のは、多くのメリットがある。しかし、「毎日2時間以上走る」とかになると、デメリットも多く、むしろ健康を損ねる結果になりかねない。
「有酸素運動」と「筋トレ」の比較
「有酸素運動と筋トレ、どちらが良いか?」だが、共通して言えるのは、どちらも「適度ならメリットが多い」し、「やりすぎるとデメリットが多い」こと。
「ダイエット」を意識するならば、どちらかと言えば「筋トレ」がおすすめ。
同じ時間を運動に費やすなら、筋トレで筋肉量を増やして、食事制限をしっかりやるほうが、長期的には痩せやすい。
ただ、「有酸素運動」でも筋肉は鍛えられるし、痩せることはできる。
「カロリー消費が効率的な身体になる」とデメリットで挙げたが、長距離を走り込んでも効率が悪いというだけで、1日数十分程度であれば、ダイエットにとってもちろん効果的。
「有酸素運動」が「筋トレ」と比べて優れているのは、体調やメンタルを整える効果が高いこと。
特に、「自分が気持ちよく走れる範囲で、適度に行う」有酸素運動は、肉体面と精神面のトータルで、非常に良い効果がある。
なお、「筋トレ」か「有酸素」かのどちらか一つに絞る必要はまったくなく、両方ともできるなら、もちろんそれが望ましい。
ちなみに、筋トレ系の情報として「有酸素運動をすると筋肉が解体される」とよく言われる。これは事実だが、一般人レベルで考慮する必要はない。
「競技レベルで筋肥大を目指している」人は、カタボリック(筋肉の分解)を恐れて有酸素運動を控えるが、一般的な基準における健康や美容を目指すなら、筋トレと有酸素の両方をやって全然問題ない。
以上、「有酸素運動のメリットとデメリット」について解説してきた。
有酸素運動は、メリットも多いが、走ったり泳いだりが苦手な人は、無理をしてまでやる必要はない。
有酸素運動が苦手な人には、「HIIT」というインターバルトレーニングがおすすめ。短期間で効率よく、筋力と心肺機能の両方を高め、体内の酸素供給量を増やすことができる。

なお、当サイトでは、「ボディメイク」や「ダイエット」の関連の記事を他にも書いているので、よければ以下のページも参考にしていって欲しい。


